ヅカ初心者の雑記

宝塚歌劇団にハマりかけの干物女による雑記

『アイラブアインシュタイン』(2016・花組)感想(スカステ)

瀬戸かずやさんのディナーショーが開催されましたね!だからというわけでもないのですが(?)先日スカステで放送された『アイラブアインシュタイン』を見ました。めっちゃくちゃ好きなお話でした。(これは他のバウ公演もそうですが)こんな面白い話がバウホールで10日間だけ、DVD化もしてないなんてリッチな脚本の使い方だな~というきもち……!

公演概要

20世紀中盤、天才科学者アルバートが開発したアンドロイドは、人々の生活になくてはならないものになっていた。世俗の喧騒を逃れ隠遁生活を送るアルバートのもとに、ある日、エルザというアンドロイドが助けを求めにやって来る。働き口を奪われた人間達による反アンドロイドの機運が高まる中、人間と平和に共存する道を模索する為、自分たちにも感情を与えて欲しいというのだ。エルザに亡き妻ミレーヴァの面影を見たアルバートは、科学者仲間であるトーマスの力も借りつつ、エルザに感情を与えようと奮闘する。ひたむきで純粋なエルザに次第に惹かれていくアルバートだったが、エルザはどうしても「愛」の感情だけは理解することが出来なかった。愛とは何かと問われたアルバートは、ミレーヴァをどんな風に愛していたのか、どんな感情だったのかを伝えようとするが、何故かどうしても思い出せないのだった…。
https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2016/einstein/index.htmlより引用

感想

あきらさんに金髪・メガネ・科学者というビジュアルを与えてくれた演出家の谷先生、天才では……??最後のあいさつでこれがデビュー作だとおっしゃっていましたが、信じられないくらい私のツボにはまるお話でした。全体的にとにかく台詞の掛け合いが多くて、歌唱力やダンス力以上にお芝居の力が求められている舞台だと感じました。

まず、あきらさん演じるアルバートはアンドロイドを作った天才科学者。記憶の一部が思い出せないまま、城妃美伶さん演じるアンドロイド・エルザを引き取ることとなります。エルザは天真みちるさん演じるハンスや梅咲衣舞さん演じるアンネとはかなり違った趣の性格で、ここの差異をどのスターさんも見事に演じられていました。ハンスやアンネも「完全にアンドロイドらしい」わけではなく、滑らかな台詞の中に機械音声らしい抑揚をにじませているところなど、人間との微妙な演じ分けが素晴らしかったです!

水美舞斗さん演じるトーマスはこの舞台のキーパーソンですが、とにかくビジュアル・ダンス・歌・演技どれも最高でした!!ちょうど今月の「歌劇」を読んで「マイティーとピンク色の組み合わせめちゃくちゃかっこかわいいな~」と思っていたのですが、トーマスは桜のような色の髪にショッキングピンクのシャツを着ていて500000000点でした。
さらに二幕ではストーリーテラーとして、アルバートとミレーヴァの身に起こった出来事を怒涛の勢いで語っていくのですが、その姿は鬼気迫るものがありました。姉を亡くし、実験の成果だけを無責任に託して後を追った義兄。「二人の愛の結末を見届ける」ためだけに、二人の亡骸を使って二人そっくりのアンドロイドを作り上げる。トーマスを「姉を失い怒りに燃える人物」として描くのではなく、「全ての感情がぐちゃぐちゃになって、それでも悲劇で終わらせることだけは許したくない」という複雑な感情の持ち主にした点に、脚本も、それを演じきれるパワーも凄まじいと感じました……。トーマスは、その行動自体は明らかに狂気の沙汰なのに、そんな狂気的な自分を俯瞰で見ているような冷静さも併せ持っていて、狂気と正気の境目でゆらいでいる様子が痛々しいほど伝わってきました。
あとカメラが寄ったときに気づいたのが個性的なお化粧。右目は水色・左目はピンクのアイシャドウで、宝塚にしては珍しく(?)(私が気づいてないだけで珍しくないかもですが)カラコンをしていました。アルバートから託された知恵の実を隠し通すために義眼にしたということに加えて、トーマス自身の不安定さも表しているようでとても似合っていました。

城妃さんと桜咲さんはあまり似ていないので、「面影を感じる」は最初ちょっとハテナだったんですが、この二人の対照的な部分と似ている部分があってこそアルバートが際立っていたんだと感じます。アルバートだけに見えている幻影のミレーヴァはどこか影があって上品な女性、しかし二幕に明かされる出会いの場面では、知的好奇心と行動力に溢れた力強い女の子として現れて、それが「人間や感情についてなんでも知りたがる一幕のエルザ」とダブって見えました。

専科の英真なおきさん演じるレオと亜蓮冬馬さん演じるヴォルフ、二人の関係性もまた物語の中で重要な役割を果たしていました。このお話って「完全な悪人」がいないというか、それぞれが今まで生きてきた経験に裏打ちされた価値観を持っていて、そのすれ違いによって諍いが起こっているんですよね……。総統を信奉していたひとたちも、ヴォルフ(エドゥアルト)がアンドロイドだとわかってすぐに掌を返すのではなく「信じる・秘密を墓場まで持っていく」という選択をしていて、生きている人間らしい矛盾を感じ取れました。
アルバートに「ヴォルフでいるのかエドゥアルトでいるのかは自分で決めるべきだ」と言われ、「ごめんなさい」を告げてレオの息子・ヴォルフとして生きることを決めたシーンも胸がきゅっとなりました。しかもあそこでそのあとの二人について描写しすぎないところも良かったです、描かれなくてもレオのアンドロイドに対する姿勢が変わったであろうことは分かるので……!!

触れるのが最後になりましたが、やはり主役のアルバート。本当に本当に難しい役どころだと思いました。解説には『果たして、「AI」は、「愛」の感情と「I(自我)」を持つ事が出来るのか。』とありますが、「愛」はどの人物たちにも共通していることです。レオとヴォルフの家族愛、アルバートとミレーヴァの深い愛、エルザとアルバートに生まれた愛、「二人の結末」に対するトーマスの執着のような愛など……。
一方で、「自我」のほうはというと、総統の言うことを信奉して自分で判断することを疎かにしていた民衆と、人間・アンドロイドどちらの状態でもあったアルバートに対して焦点が当たります。『アイラブアインシュタイン』の世界では結末を見る限りたしかにアンドロイドにも自我がありますが、それではアルバートアルバートの脳を使って作られたアンドロイドが完全に同一の自我を持ち得ているか?という疑問も浮かびました。
エルザとキスするときにアルバートは回路が故障しなかった/アルバートがミレーヴァの幻影を見ていた、ということをトーマスが述べ、「そこにはミレーヴァへの愛があるから」といいます。私は、ミレーヴァとその心臓を使ったエルザが別の自我を持っているように、ミレーヴァの後を追ったアルバートとエルザと結ばれたアルバート同じ記憶と感性を持った別の自我だと思いました。自我という語からは強烈な一本柱のような印象を受けるけれど、本当は愛と同じくらい曖昧なものなのかなーと。

終演後のあいさつでは、あきらさん以上に梅咲さんが感涙しているのを見てこっちが泣きました(?) ずっと花組で一緒にやってきた同期が入団13年目にして初バウ主演、きっとものすごくこみ上げるものがあったんですよね(;;)
あきらさんは本当に堂々としていてかっこよかったです!後ろのしろきみちゃんとべーちゃんの優しい表情も素敵でした。
これを生で見に行けた人が本当にうらやましいです……!!
(ちなみにこの記事、ばーーっと書いたら感想がめちゃくちゃ長くなってびっくりしています。大嘘書いてたら本当にごめんなさい)